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「介護保険の行方を占うKEY WORDS」 |
第5回(1999年12月号) |
| 介護保険制度下では、サービスを多くの主体が提供することとなり、当初はその質のばらつきが予測され、サービスの成果を評価していこうという意見が活発になっている。意見の多くは、サービス内容や希望するサービスが確保されない場合の苦情の処理のことであることが多い。「評価」とは、何らかの目的をもって、その目的に照らした場合に達成されているか、されていないかを判断することであって、近ごろの意見を聞いていると、苦情処理から質の評価まで混同しているように思える。今回は評価の目的と方法を整理しよう。 評価の目的 介護保険制度下で、なぜこれほど評価に注目が集まっているのか。従来はどのように苦情の処理やサービスの評価を行っていたのか。社会福祉の関係者の中で「そんなに苦情があるとは思われない。従来だってなかったのだから。あるとしたらこれから参入する企業や組織だろう」という意見の方もいる。本当に従来は苦情はなかったのか。答は、否。従来の福祉は措置の仕組みの中で苦情を申し立てたり、評価を行えるような制度ではなかった。措置という行政処分を受ける側にはそのような権利はなかったのである。それでもいくつかの施設では、入所者の声を聞いたり、オンブズマン制度の導入を行ったりしたいたがところもあたが、そもそもそのようなことに気が付く施設長のいることろは問題は少ないのである。問題はその他の多くの苦情も受け付けないという姿勢の施設なのである。 このことは、病院も同様である。医師も看護婦も有資格であるからか、忙しいからか、「ケア」には関心を示してこなかった。注射をしたり、薬を飲ませたり、熱や血圧を計ったり、はするが、入浴介助やおむつ交換も基本的には介護職の仕事になっていた。おむつを交換するときにただれていないか、尿量や色はどうか、を観察することができるのであって、わざわざ皮膚の検査や尿検査をしなくてもよい。観察の結果、異常が感じられたら検査をすればよいのである。従来、介護を一段低い仕事とみなしていたために見逃していた問題も少なくなかった。そして、そのようなことは黙っていても患者にも伝わる。こんな世話をかけて申し分けないと思わさせるに十分な環境であり、苦情を言えるようなものではなかった。また、苦情を言おうものなら退院させられるかもしれない、と考え、黙ったままでいたのであろう。 「苦情」と「評価」 まず初めに、「苦情」と「評価」は異なるということを理解しておかなければならない。苦情の件数や苦情処理の仕方は、評価の対象になるが、評価そのものではない。評価とは、客観的なものであって、システムとして実施されることが必要なのである。 では、何のために何を評価することが必要とされているのであろうか。まず、第一にはよりよいサービスの提供がされているかを測るためのサービスの質の評価、第二には保険事業としての効率性の評価、そして第三には保険事業としての公平性の評価である。このような評価が必要なのは、契約によってサービス利用者がサービスを評価し選択することができるようになった、また、保険者が被保険者に対して説明責任を持つようになったからといえる。 サービスの質の評価 介護サービスの質を測る方法は一般に三つあると考えられる。@サービスを提供する機関や組織の人材構成や資格の有無(Structure、構造)、Aサービス提供における顧客との合意のとり方やサービス職種同士の連携のとり方(Process、過程)、Bサービス提供の結果による対象者の状態改善(Outcome、成果)である。この中で近年特に重視されているのが第三の「成果」である。 サービスの質を測ることは意外に困難だ。特に介護サービスは、次の二つの理由によりさらに困難になっている。第一に、対人サービスの中でも密室性が高く、どのようなサービスが提供されているのか、第三者がその場でみることができない。第二に、どんなにサービスの内容がよくても、対象者は介護を必要としている高齢者であり、通常は加齢のため身体機能の低下や症状の悪化が必然の場合が多い。よくなったとしてもそれがケアの成果か、本人の持つ力なのかの分か断が比較的困難である。 そこで必要になるのが、評価ができるアセスメントとケアプランの作成、すなわちプロセスの確立である。アセスメントとは、個々の高齢者の持つ能力を見極め、できることできないこと、あるいは状態の悪化の危険性を早期に把握すること、ということができる。ケアプランとは、アセスメントの結果判断された個人の潜在能力を現実のものとし、また悪化の危険性を未然に防ぐために実行されるケアの内容、担当者、実現までの予測される期間等を示すものである。従って、評価の対象となるのは、予測された期間内に予測された成果を実現することができているかどうか、である。 保険事業としての評価 一般に事業を評価する方法は、かかったコスト(費用)と得られた成果の対比で測られる。どんなに優れた事業(サービス)であれ、コストがかかりすぎるようでは見直しの対象となることが多い。ケアサービスはおおむねが人件費と施設管理費でその他材料費等が占める。どちらかというと、StructureとProcessが評価の対象となり、それに対して成果がどの程度か、ということが評価の基準となる。 介護保険事業の場合、事業のメニューは規定されているため、個別の事業のほかに、サービスの総合的なバランスの中で個別に評価することが必要になると考えられる。というのは、介護保険の基本理念、すなわち高齢者の自立した生活が確保されているということが最大の目標であり、例えば、地域に自分の意思で生活を継続する高齢者がどの程度いるか、あるいはどの程度増えたかということが、評価の指標になる。 保険事業としての公平性の評価 保険給付を受けるか否かはそれぞれの選択に任せられるため、当面サービスの利用量は高齢者によって大きく異なってくることも予想される。自由意思とはいえ、市町村が保険者として管理するものであり、要介護の状況に応じて極端に利用負担の差がないことが求められる。では、どのような高齢者がどの程度のサービスを受け、どの程度負担しているのか(どのような分布状態か)を把握し、仮にばらつきが大きいようであれば、その原因を探り、地域全体として問題がないかどうかを検討することが必要である。 評価システムの構築 評価というと、とても大層なことに聞こえがちであるが、どのようなことができるか、まずはやってみることが重要である。 評価するのはだれか、ということが次の問題になるが、このことは評価システムとして全体の中で考えていかなければならない。第三者評価が必要という意見もあるが、評価するものによって異なっていると思われる。サービスの質の評価は、やはり専門家の意見を聞きながらの方がよいし、また、事業の評価、および公平性の評価については基本的には行政が中心となって、住民に情報公開をしながら常に検討することが必要であろう。 いずれの場合でも重要なことは、客観的な評価の手法と数値化される結果である。それも単体での評価は困難であることが多く、いくつかの視点からの数値を公開して検討・議論してもらうことが必要であろう。この議論の場をどのように設定するのか、住民、事業者、行政が一つのテーブルについて同じ土俵で議論する環境を整えることが重要である。 |
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