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「介護保険の行方を占うKEY WORDS」

第1回(1999年6月号)
介護支援専門員(ケアマネジャー)
五十嵐智嘉子(HIT理事・調査部長)


 平成10年度、全国で約21万人が介護支援専門員実務研修受講試験を受験し、約9万人が合格、北海道では約1万2000人が受験し、約5300人が合格した。介護支援専門員(ケアマネジャー)は、介護保険制度の円滑な実施の鍵をにぎる存在ともいわれている。今回は、ケアマネジメントの背景、ケアマネジャーの制度上の位置付けと役割、そして次回では今後期待される役割と課題について考えていきたい。

ケアマネジメントの背景

 ケアマネジャーは、「ケアマネジメントを行う人」のことであるが、ではケアマネジメントとは何か。文字どおりを解釈すれば「対象者に必要と考えられるケアをマネジメント(管理・調整)すること」である。ケアマネジメントの概念は新しく、理論面と実践面において体系的に確立されたものとはなっていないのが現状と言える。
 ケアマネジメントのルーツを辿ると、1970年代、アメリカのソーシャルワークの分野で研究と実践が進められた「ケースマネジメント」に行き当たる。ここでは詳細を述べることはできないが、若干その背景に触れると次のようである。世界の先進国では、精神的・身体的な障害を持った人々の療養の場として各種の「施設」が用意されていたが、次第に施設に収容されることを拒み、地域で自分の意志で生活することを望む者が表れてきた。このような障害者の希望を尊重し、地域での自立的な生活を支援するために生まれた技法が「ケースマネジメント」である。主にソーシャルワーカーや保健婦が、対象者(ケース)に面談し、必要なサービスを話し合って決める。そしてサービスが適切に提供され本人の在宅生活が守られているか、新たな問題が発生していないかをフォローしていく、という過程を繰り返す。この手法は、カナダ、イギリス等各国に紹介され、対象者も障害者のみならず、高齢者(障害高齢者)に拡大していった。
 特に、イギリスでは、施設収容は一種の懲罰の意味があり、人権上の観点からも在宅支援が社会的ニーズとなっていたことから、急速に普及した。さらに、ケース(対象者)に対する管理の意味合いの強い「ケースマネジメント」という用語をやめ、ケア(サービス提供の内容や費用)を管理する意味合いの強い「ケアマネジメント」という用語が誕生した。なお、イギリスでは、社会保障費の増大により、医療やケアにかかるコストの削減が大きな命題となっており、同時に高齢者の尊厳を守るために、1990年、「National Health and Community Care Act(国民保険サービスおよび地域ケア法)」が制定され、在宅ケアの重視と民間活力の導入が打ち出された(施行はそれぞれ、91年、93年)。
 日本においては、介護保険制度を議論する過程において、「高齢者の自立支援」をより明確な形で示すために「ケアマネジメント」の用語が採用された。なお、これが「介護支援サービス」という日本語に翻訳されたのは、当時の小泉厚生大臣が「カタカナ用語の廃止」を打ち出したためである、ということは周知である。(「サービス」は日本語として市民権を得ている。)
 以上のように先進国で「ケアマネジメント」の導入が進んだ背景をまとめると、@施設収容から在宅生活の重視、A医療・福祉財政の逼迫とコストの抑制(適正化)、B医療・福祉など多様なニーズを持つ者(特に高齢者)の増大、C医療・福祉サービス提供の縦割りの是正、D要介護者への社会的支援の必要性の認識の向上、といった点に整理される。
図1 高齢者から見たケアマネジャーの役割


制度上の位置付け

 ケアマネジャーの法律上の位置付けは以下のようである。まず、介護を受ける場として、在宅と施設の2つがあるが、在宅でのケアマネジメントを行う機関が居宅介護支援事業者(ケアマネジメント機関)と呼ばれるものである。ケアマネジャーは、居宅介護支援事業者(ケアマネジメント機関)および介護施設が介護保険給付事業者の指定を受ける基準の1つとして必置とされている。省令では、居宅介護支援事業者がケアプランを作成する際には、この業務をケアマネジャーにさせることとなっており、さらにケアマネジャーは、「ケアプランの作成のために適切な方法で対象者の能力や問題点を明らかにし、自立した生活を営むことができるようにに支援する上での解決すべき問題点を把握しなければならない(これをアセスメントという)」、と定められている。
 まわりくどくなったが、ケアマネジャーは、サービス利用者に対して適切と考えられるケアプランを作成し、ケア提供者とコンタクトし、サービスの調整・実施・評価を行う者と規定されているのである。
 ケアマネジャーの役割を、ケアを受けようとする高齢者の側からみると、大ざっぱには図1のようである。本人が老化や病気によって身体的、または精神的な障害を自覚(他覚)し、生活上に不便が生じ始めたら、@要介護認定を受け(その方法は今月のQ&Aに詳しい)、A必要なサービス提供機関に連絡し、契約する、ということになる。これを本人または家族ができればよいが、多くのサービスを必要とする場合には多くの機関に連絡しなければならず、またサービス内容が専門的でどのようなサービスが適切なのか判断がつかない場合もあり、Aについては、居宅介護支援事業者に依頼することができる。ここで、事業者に所属するケアマネジャーの訪問を受け、日常の生活の様子を聞いてもらう。緊急時にはその場でサービスが決定されることもあるが、たいていは後日作成されたケアプランと必要なサービス一覧が出来上がるということになる。それが納得いくようなプランであれば、サービスが決定される。なお、居宅介護支援事業者(ケアマネジメント機関)が実施するケアマネジメント対する支払いは介護保険から10割が給付対象となり、本人負担は0である。

図2 ケアマネジメントのプロセス
チームケアとケアマネジメント

 一般に、ケアマネジメントはプロセスで説明され、おおむね図2のようである。まず、対象者と面談し、アセスメントを行って、必要なケアサービスを決める。次にそれらのサービス提供機関に連絡し、ケア担当者(ホームヘルパー、訪問看護婦、デイケア職員など)との会議によってケアの詳しい内容について打ち合わせし、決定されたものをケアプランとして本人、家族に示す(次回述べるが、本人と一緒に作成する方が望ましい)。ケアサービスが提供された後は、モニタリングによって本人の状態の変化やサービスの提供状況を管理し、必要に応じてケア内容やサービスを変更する。一定期間(おおむね3ヵ月から6ヵ月)経ったところで、再アセスメントを行い、ケア内容やサービス全体を見直す。
 現在、多くのケアマネジャーは、アセスメントからケアプラン作成までにも時間を要し、その上でマネジメントの仕事をこなし、平均40人といわれている対象者一人ひとりに見直しの作業を3〜6ヵ月ごとにこなせるか、また、介護報酬額がそのような業務内容に見合うものになるのかどうか、について不安を抱いている。
 では、ケアマネジャーはケアマネジメントのプロセスをすべて一人でこなさなければならないのだろうか。ここで2つの方法を提案したい。第一は、アセスメントからケアプランの作成は実質的にはケア担当者が行い、ケアマネジャーはその総括を行うことである。もちろん自分の目でアセスメントを行うことが必要だが、むしろ頻繁に訪問し、高齢者の状況をよく把握しているケア担当者が行った方が適切な場合が多いと思われる。
 第二には、最初から100%のケアプランを作成しなくてもよいのであって、暫定ケアプランの期間に例えばホームヘルパーが訪問するとすれば、その情報も含めて1ヵ月経ったころに再度ケアプランを見直すことも可能である。
 そのような、ケアマネジャーを中心としたケアスタッフのネットワークがケアチームであり、ケアマネジャーはチームの要として管理・調整・評価の業務に重点を置くようにする方が効率的であるように思われる。
 当面2つの点で混乱が予想される。1つは、チームが常に一定ではないということだ。対象者によって必要なサービスが異なれば、当然チームのメンバーも変わる。一人でいくつものチームをかかえることは結構な負担となるだろう。なるべく同じ地域の機関でチームを組むことを心掛け、その動きを相互に把握し、把握されるようにすることが必要だろう。2つ目は、ケアマネジャーは専任ではなく、ケア担当者が兼務になる可能性が高いことである。現状では、訪問看護婦や保健婦、ホームヘルパー等がケアマネジャーとして活動することが多くなるだろう。その場合は、利用者数を限って役割分担をすることが重要である。

ケアチームを形成するために

 チームを組むための条件は、信頼関係である。ケアの質が悪ければ、その機関、またはそのメンバーはチームからはずれてもらわなければならないかもしれない。また、チームのすべてのメンバーも課題把握を常に心掛けていることが必要である。そうでなければ、ケアマネジャーに言われたとおりのケアしかできなくなる。個々のメンバーの力量が上がれば、ケアマネジャーの業務も軽くなるし、より効率的に仕事がこなせるようになるだろう。
 さらに現実的な問題は、異なる法人が経営する機関に所属する者が、チームとして一緒にやっていけるか、である。昨今の状況からいえば、特に札幌市は、一つの法人がいくつもの種類のサービス機関を経営していることが多く、法人ネットワークの中でしかチームができない状況が危惧される。
 ここでケアマネジャーには、別の顔を持ってもらうことになる。本人に適切なケアサービスを提供することを目的とするのであって、所属する機関の利益を目的とするのではない、という倫理規定が設けられている。このことを実現するためにも、ケアマネジャーに対しては(もちろん市民に対しても)ケアサービス提供機関に関する適切な情報を届けること、ケアマネジャー同士のネットワークを組み、相互に学習することが必要である。

 

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