ケアマネジャーの仕事
前回、ケアマネジャーは、サービス利用者に対して適切と考えられるケアプランを作成し、ケア提供者とコンタクトし、サービスの調整・実施・評価を行う者と規定されている、と書いた。モデル事業においては、ケアプランを作成するのに、1人当たり4〜5時間もかかったという報告があった。現実にはそれでは対応できない可能性がある。では実際にはどのように進めるか。
所属する機関で担当する利用者についてアセスメントからケアプラン作成まで全員分を一人でするのではなく、チームで取り組む。ケアプランを作成するのがケアマネジャーだと言いながら、矛盾しているようだが、ケアプランそのものはケアスタッフが作成し、ケアマネジャーはその評価を行って進行管理を行う方がよい場合もある。というのは日ごろからケアを提供しているスタッフの方が本人の状況を把握していたりするからである。しかしながら重要なことは、包括的に本人のニーズを把握できるか、ケアを調整できるかということであり、このことは、比較的経験と力量のある人材でなければ、難しいところである。
学習不足も否めない。第1にケアプランそのものの学習がいまだ不足である。作成するべきケアプランを理解しないで課題発見のためのアセスメントをひねくり回してもしようがない。ゴールの方向が分からないのに走り出すようなものである。第2に、ケアプランはそれを実行して評価するという一連の過程の中でしか生かされない。そのために一人ひとりのケアの結果を把握するという訓練が必要である。
もちろんケアマネジャーが自分でアセスメントし、ケアプランを作成することは、特にケアマネジメントが成熟していない現在のわが国では必要と思われる。しかしながら、ケアマネジャーは、あくまで評価者であり調整役であることを忘れてはならない。
ケアマネジャーになるために
平成10年度の北海道の介護支援専門員(ケアマネジャー)実務研修は5月末にすべて終了した。しかし見た感じでいうと、実際にケアマネジメントの業務に携わる者は受講者の半分以下、場合によっては2〜3割といった状況になることが予想される。研修会では、医師、歯科医師、薬剤師、保健婦、看護婦、ソーシャルワーカー(相談員を含む)、ホームヘルパー、PT、OTといった多職種が同じ土俵で議論をしたよい機会となった。今後実際にはケアマネジャーの業務に携わらなくともさまざまな場面で協力関係が築かれただろう。今後ともこのような機会が持たれればと思う。
では、介護支援専門員(ケアマネジャー)にはどのようになるか。まず、介護支援専門員は資格ではない、ということを理解しておいていただきたい。実務研修の受講を終了したという証明書が交付されるにすぎない。資格とほとんど同様と思われるが、それがなければできないというものではない。前回にも書いたように、本人が自分で行ってもよいのである。さらに職種は多様で、表のような保健・医療・福祉の従事者で、実務経験5年以上、などの条件がクリアされていれば、介護支援専門員実務研修受講試験を受けることができる。
| 医師、歯科医師、薬剤師、保健婦(士)、助産婦、看護婦(士)、準看護婦(士)、理学療法士、作業療法士、社会福祉士、介護福祉士、按摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、栄養士(管理栄養士を含む)、義肢装具士、言語聴覚士、歯科衛生士、視能訓練士、柔道整復師、精神保健福祉士など |
では、@なぜ、試験と研修なのか、Aなぜ、このように多職種なのか。まず、@介護保険制度の施行まで2年という状況で、全国で約4万人の介護支援専門員の養成が必要になったため、まずは、一定の専門的知識があり実質的にすでにケアマネジャーとしての仕事をしている者を養成することの方が現実的であった。養成のための研修時間は必要であるが、多くの受講者は現場を持っている。そのため、介護保険制度や専門知識等研修で行わなくても知識として知っておくべきこと(ケアマネジャーの常識として理解しておくべきこと)は試験で確認しようという方法をとることになった。
しかし、Aどの職種を認めるべきかということいついては議論があった。介護保険が対象としている高齢者のニーズ(課題)は医療ニーズから生活ニーズまで幅広い。そのため職種を限定することはできず、一定の知識があれば、むしろ高齢者のことをよく理解していることの方が重要な要件と考えられる。薬剤師や栄養士、針・灸・マッサージ師、柔道整体師、といった職業は、職種としてケアマネジメントを実際には行っているとは考えられないが、高齢者を理解しケアマネジメントを行うことができる立場にあることは間違いない。
施設のケアマネジャーの役割
施設においてケアマネジャーは必置であるが、ケアマネジメントの介護報酬は施設の介護報酬に含まれるとされている。施設のケアマネジャーの役割については明確に示されていないが、2つの役割が考えられる。第1は、退院・退所時に在宅のケアプランを作成すること、第2は、施設内でどのように生活支援や医療等を提供するかについてケアプランを作成し、関係する職種によるチームの調整・管理を行うことである。この場合はさらに在宅を目標にするか、施設での生活を目標にするかに分かれる。
それぞれの役割は異なっているようにみえるが、実はそうでもない。いずれもある環境の中で本人の自立度を最大に保つようにすることがケアが中心課題になる。
本人や家族は、障害を持って退院・退所することに対して大きな不安を持っている場合が多い。それが高じると、このまま施設に置いてほしいという希望になって、社会的入院・社会的入所をもたらすことになる。一方、介護に対して気負いを感じている家族もある。そのような家族は介護をずべて自分でできる、してあげたいと言う。が、実際には、1カ月もしないうちにダウンすることが少なくない。
在宅に向けての本人や家族の心の準備はむしろ入院・入所時からしていかなければならず、施設のケアマネジャーの役割はどのような状態になったら帰れる、帰ったらこのように生活できる、という姿をはっきりと示してあげることである。可能であれば、在宅に復帰後もケアマネジャーとしてかかわれればよいが、そうでない場合には在宅のケアマネジャーへの引き継ぎを行うようにする。在宅のケアマネジャーには、施設に来てもらって、生活の様子を見てもらい、復帰後の住居環境に照らしてどこに問題があるかを一緒に考え、必要と思われるサービスを退院前に決定してしまうことが望ましい。
蛇足ではあるが、施設内においても、チームケアの考え方は重要である。むしろ施設内では、「チーム」という考え方よりも「ライン」の考え方が浸透している場合がある。業務管理上のラインは必要だが、ケア上での管理はチームの方が動きやすく、成果も分かりやすい。病棟単位での職員配置から、患者担当制の配置に転換することが必要であろう。
おわりに
ケアマネジャーは、担当する高齢者の状態について常に目配りが必要であり、そのため、かかわるスタッフから情報をもらおうとするようになるだろう。しかし、しのためにケアマネジャーがすべきことは、むしろ情報を発信することである。次のような例がある。ホームヘルパーが入浴介助のため担当の高齢者の自宅を訪問した。ところがその日ご本人に熱がある。すぐにケアマネジャーに連絡したところ、ケアマネジャーは「今日の入浴は中止し、医師に診てもらうようにする」ことを伝え、かかりつけの医師に連絡をし、往診を依頼した。医師がいって診ると、かぜで肺炎には至っていなかったが、放っておけば危うい状況になっていた。ここまではよくある話である。ここでケアマネジャーは、連絡をくれたヘルパーに再度連絡し、状況を伝え、「ありがとう。あなたの連絡で適切な処置ができた」とお礼を言った。このことが重要である。連絡は当たり前といった態度でいると、情報は集まらなくなる。自ら情報を発信しなければ情報は集まらない、ということを忘れてはならない。ちなみに、このヘルパーは以降も頻繁にケアマネジャーに連絡し、指示を仰ぐようになり、このケアマネジャーのもとには、訪問しなくても、十分な情報が集まるようになっている、ということである。
介護支援専門員の標準テキストには介護支援専門員に求められる資質として、「自主性の尊重」「中立性」「公平性」といった点が記されているが、加えて「柔軟性」と「情報発信力」を求めたい。
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