1999年夏期、特に注目される軍事分野での出来事はパシコ海軍中佐の軍事裁判と中国への武器移転(最新鋭戦闘爆撃機および駆逐艦)であった。
まず、パシコ事件の発端は、連邦保安局沿海地方管理局が1997年11月20日、日本出張(公務)から帰国したパシコ海軍中佐(当時、太平洋艦隊機関紙「戦闘当直」の教育訓練担当部長)を、ウラジオ空港において逮捕したことであった。拘束理由は、同中佐が太平洋艦隊関連の秘密資料10件を、『朝日新聞』および「NHK」の記者に提供した疑いによるものであった。
裁判は太平洋艦隊軍事法廷において、99年1月21日から非公開で始まった。軍検察側は被告の行為を機密漏洩とみなし、「祖国に対する反逆」および「スパイ行為」(国家犯罪)として有罪を主張した。これに対し、弁護団は、同中佐が日本へ提供した資料は秘密ではなく、太平洋艦隊による環境汚染関連情報であると、強く反論し、無罪を求めた。結局、軍事法廷は99年7月20日、パシコ海軍中佐の職権濫用のみを有罪とし、同中佐に自由剥奪刑3年を課したのである。パシコ海軍中佐は20カ月間の収監と連邦下院の特赦決定により、即日釈放されている。しかし、弁護団は軍事法廷の判決を不服として、連邦検察総局へ告訴している。太平洋艦隊司令部は9月8日、パシコ海軍中佐の復職に関する一部マスコミの報道を、全面的に否定するという一幕もあった。この問題はなお当分の間、尾を引きそうである。
太平洋艦隊老朽原潜および艦艇による海洋汚染は衆目の一致する所である。従って、同艦隊の恥部が赤日に晒された事実そのものがパシコ裁判の争点であった。判決を見る限りでは、わずかに残されたロシアの良識が読み取れる。
今一つは、ロシアの対中国武器移転である。中露経済関係の促進を協議する政府間交渉が去る8月24日から4日間、北京において開催された。会議には中国側から朱鎔基首相および張万年中央軍事委員会副首席が、ロシア側からクレバノフ副首相がそれぞれ出席している。そして、会議最終日の8月27日、ロシアの最新鋭戦闘爆撃機「Su-30MK」(「Su-27」の改良機)約50機の対中輸出に関する両国政府間協定が調印された。その契約高は約20億ドルである。
99年7月20日の太平洋ラジオによれば、コムソモリスク航空機製作合同はすでに迎撃戦闘機「Su-27」45機を中国へ納入した。そして、中国は「Su-27」のライセンス生産を、遼寧省の瀋陽(奉天)において開始したもようである。また、「Su-30MK」は行動半径1,500キロを有する地上攻撃型の戦闘爆撃機で、ロシア空軍の最新鋭機である。中国はかねてから同機の購入を、ロシア側に求めていたのである。
一方、航空機製作合同「プログレス」は7月下旬、ロケット生産契約の第1部を終了した。この艦艇搭載用ミサイル「モスキート」はアルセニエフからサンクト・ペテルブルクへ発送され、同地で建造中の中国海軍駆逐艦に装備される。中国艦艇用ミサイル「モスキート」の納入契約は2001年度に完了する見込みである。このミサイル生産は現在、「プログレス」における総生産量の約30%を占めている。
このように、中国はロシアとの提携を強化し、空・海軍の装備更改を進めている。今後の関連動向に着目する必要がある。
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