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2000年8月号(222号)特集 IT革命は北海道のチャンス
■札幌発世界行のIT革命は「VoIP」技術から始まる  

[対談]
村田利文((株)ソフトフロント代表取締役社長)
佐藤栄一((社)北海道開発問題研究調査会・主任研究員)

今、最も注目されているサッポロバレーの雄である「ソフトフロント」の村田社長に、今秋、アメリカで発表する「VoIP」技術を駆使した新製品「KISARA」誕生にいたる経緯とこれからの経営について当会の佐藤主任研究員がインタビューする。

なぜ、ソフトフロントが注目されるのか

佐藤●早速、お話をうかがいます。最近新聞紙上で「ソフトフロント」の名前を目にする機会が増えています。「VoIP」※(Voice over Internet Protocol)技術を開発されたことで非常に注目を浴びているようですね。この新製品のことと今後の戦略についてお聞かせ下さい。

※VoIP:音声をインターネットのパケットデータで送受信する技術規格。この技術を用いると、電話の機能をインターネット技術で実現できるため、電話とコンピュータの融合ができる。ソフトフロントでは独自のリアルタイム音声ストリームエンジン「NOSKI」(ノスキ。アイヌ語で中核の意)の開発に成功し、その音質、圧縮比率、伝送遅延の縮小において、世界最高水準と注目されている。

村田 利文氏村田●私どもは「VoIP」技術を2年以上前から集中して開発しています。インターネット上で電話ができると言われて3年とか5年が経つのですが、実用品としては普及していません。それはインターネットの問題だと皆さん思っていたのですが(それももちろんありますが)、むしろPC(パソコン)での遅延に着目して、改善すれば現状のネットワークでも十分に会話ができる、と目標を設定して研究してきました。
 現時点でマイクロソフト社を始め、何社もが電話機の機能を果たす「VoIP」関連商品を出したのですが、どうしても音切れや致命的な遅延がある。これを解決する方式を考えいくつかの特許を取得したのです(申請中を含む)。簡単に言えば従来のOS(基本ソフト)の一部とか、ハードウェアに付属したソフトも含めて、全体で新しいソフトシステム(アーキテクト)を考え、すべてを自前で作ろうとするものです。他社と比べ4倍から5倍くらい早いエンジンです。
 この技術をそのまま利用者に提供してもアプリケーションまで落としたものにしないと使い勝手が良くないので、私たち自身がアプリケーション開発をして、一つのパッケージにしたのです。それがこの「KISARA」というもので、キサラというのはアイヌ語で耳という意味です。

佐藤●なるほど、北海道を意識したネーミングになっているのですね。具体的にはどのようなアプリケーション構成になりますか。

村田●今までのeコマースは、どうしても「顧客単価が少ない」「アクセス→購入の歩留まりが悪い」という面があり、高価格商品は電話での売り込み、対面販売になっています。このWebの弱点を解決するために、オペレーターと会話しながら双方が同じホームページを見ることができたら、商品情報の信頼性を高められます。例えば「こんなサービスを受けたい」「こんな商品ありますか」というやり取りを通して、相手が望む商品のデータをPCのディスプレイに提示してやり、オンライン上で対面販売をしていくことも一つのアプリケーションです。
 もう一つのアプリケーションフィールド(応用分野)が、企業内の内線電話です。現在は、電話とLANとで二重投資が行われていますが、PCでLANも音声通信できるように一元化するものです。

佐藤●すでにそれは完成の域に達しているのですか。

佐藤 栄一村田●基礎技術はありますので、パッケージ化をやっているところで、今年の後半に販売を始めます。これらは、われわれにとっては個別の技術です。
 むしろ、「VoIP」が、インターネットをベースにした情報技術の次の革命を起こすと思うのです。それはコミュニケーション革命といって、eコマースも音声を統合(インテグレート)した新しいものに変わっていきますし、オフィスでも同じ変化が起きます。

佐藤●今は電話をして、「これからメールを送ります」と言って、電話を切って、メールにデータ添付して送って、また着いたかどうかもう1回電話して、「開けてくれ」というような3つのトランザクションが一つになる革命ですね。

村田●「VoIP」普及の理由には、ひとつは利用料金を安くできるというのがありますが、むしろ重要なのはコミュニケーションの高速化によるビジネス効率の向上が挙げられます。
 それから、これによって個人とか家庭の情報環境も変わるでしょう。今、ケーブルテレビの中でインターネットができるようになったり、低額の利用料金になったりしながら、その上にボイスを乗せるとなると個人の生活が便利になる。ここにも私たちの技術が社会に貢献できる分野が広がっています。

「VoIP」がアメリカからデビューする理由

佐藤●その新しい技術の開発のきっかけは何だったのでしょうか。

村田●われわれが最初に注目したのが、「どうして電話の文化とインターネットの文化が融合していないのか」という点でした。そしてこの会社が誕生するタイミングもありました。
 ソフトフロントの前身になったひとつの会社(コアシステム)が引っ越してきたときに、「(両社の電話連絡は)LANでやろうよ」となりました。電話の交換機には当然PCの回路があるはずだから、何とかできると思っていました。ところが、そういう交換機はないということがわかった。単に電話をコントロールする部分はあるのですが、ボイスデータを引っ張り出す口はなかったのです。
 もっともその後、非常に高額なものとしてはわれわれの考えていたものがあったのですが、われわれのアイデアの方が合理的だという直感はありましたし、何とかやりたいなとずっと思っていました。しかし、売りものにするとまでは思っていなかった。
 ところが、今はIT革命の基幹部分がどんどん「VoIP」に変わっている状況です。現在は電話機と電話機の間にインターネットを利用するに止まっています。これからはPCからPCに電話するようになる。そうすると、やっとデジタル化したことの意味が出てきて、ボイスと一緒にデータをシェアできるようになるわけです。きっかけは「ないなら、じゃあやろう」という感じだったのです。電話番号のソフトがあれば、その名前をクリックするだけで相手と繋がって話ができるのも一つの例です。

佐藤●誕生のいきさつは分かりました。この夢のある「VoIP」の技術は、国内よりも先に海外で展開されようとしていますが、これも最初からの戦略だったのでしょうか。

村田●いいえ、去年の春ごろにそういう戦略に変えました。それまでは日本国内を回っていろいろとプレゼンテーションしたのです。そうすると、相手の方々は「勉強させてくれてありがとう」というレベルの反応だったのです。とくに大手は、どこでもそうでした。例えば「これは重要な技術だと思いますけれども、実用化するのは2003年くらいでしょう」というようにです。「VoIP」があまりキーワードになっていなかったのです。
 ところがその直後から、日刊工業新聞などで「VoIP」が有力だ、有望だと言われ始めました。われわれも国内の状況にがっかりしていましたので、足がかりもないのに無謀かもしれないけれども、「アメリカに行かなきゃいけない」と思い始めたのです。いろいろなツテをたどって、動きました。そうすると、アメリカ企業の受け止めが日本と全く違って、すぐに利用可能な技術という前提で取り合ってくれました。
 説明を終えると、「この先のステップとしてここまでいけばこんなことができる」なんていう話がその場で出てくるのです。「君たちのルートはこれとこれだ。ここに向けてちょっと検討してみようや」という話を大企業の経営者が簡単にしてくれるのです。で、まあ日本はアメリカでの実績がつけば、それが日本企業の判断材料になると考えるようにしました。
 それで、去年の夏前後はスタッフがみんなアメリカに行って、いろいろなところの評価をもらっているうちに「VoIP」と私たちのソフトウェア技術のニーズが間違いなく出てきたなという感触を得るようになってきました。
 そうした評価に自信を得て、米国の製品とサービスの戦略に合わせたソフトを提供する研究開発を進めてきたところです。最近は日本国内でも「VoIP」はキーワードになってきましたから、日本企業の中にもわれわれの技術をさらに開発してくれるような動きが出ていますし、利用しようとする企業も名乗りをあげています。今、国内外で営業を展開しています。国内の反応も良くなってきていますが、これにアメリカの実績がはっきりすると勢いがつくだろうと思っています。

佐藤●マーケットとして立ち上がってくるのは、いつくらいの時期と見込んでいますか。

村田●今年の秋ぐらい。今年はサービスのサイトがいくつも立ちあがります。

佐藤●アメリカで現地法人を立ち上げられたと聞いていますが。

村田●そうです。今月(6月)、現地法人をつくりまして、オフィスを構えます。この技術はある時期からアメリカで仕掛けていくという戦略を持つようになったのですが、最初はやっぱりマーケットが分からない。いろいろリサーチしてみて、去年の後半にビジネス展開できるスペースがあることがわかってきました。
 そして、さるベンチャーキャピタルの方に声をかけられ、会ったときに「おめでとう」と言われたのです。「このマーケットはまだ、だれも気がついていないよ」と。そのときに、チャンスがあると思いました。そこからは投資は受けなかったけれども(笑)評価はしてもらいました。

チャンスをつかむには集中投資

佐藤●最初は国内の企業と手を組むことを考えていたことは分かりましたが、国内市場を見限ったといいますか、後回しにして北海道の企業がIT分野で最初からアメリカに進出する事例は探すのが難しいのではないでしょうか。
 今、この札幌から技術をもって巨大なマーケットをつかむ会社が生まれる寸前というのはとても嬉しく思います。ぜひ成功を。

村田●IT分野には成功した会社がいっぱいあります。それらを見ると「早くから手をつければ、あのレベルにはみんな行けたな」というものばかりです。成功に結びついたのは、企業に集中する戦略があったところです。集中的に取り組むことは重要だと思います。手も足も出ないほどの高いレベルのものはないのです。
 アイデアの段階で「正しい」と判断したら、2年先、3年先のニッチマーケットが立ち上がるまでを辛抱してやることでしょう。マーケットはそうした流れを結構分っています。チャンスを逃したとすれば、投資家を説得できなかった私たち企業家の力不足です。

佐藤●去年、道内のIT系のベンチャー企業、それからSOHOなどの調査をしましたが、ほとんどの企業が受託ソフト開発で手一杯でした。しかし、受託中心の企業にいろいろ聞いてみると、ソフトフロントさんのようにコアになる技術の開発をしたいという欲求は強いのです。その一方で経営の安定を求めてどんな受託の仕事でも引き受けられるように間口を広げていこうとする姿勢も感じました。

村田●そうなってしまうのです。うちでも、会社設立した当時から、器用貧乏だと言われたこともあります。依頼があれば何でも引き受けようとする気持ちが働くのです。ですから「お宅の技術は大変定評があるけれども、結局儲からないじゃないか」と指摘されました。経営者はみんな怖くて業務を広げようとするものです。

佐藤●経営者とすれば、技術の特化を目指すために仕事を絞るというところには、なかなか踏みきることはできないのですね。

村田●そうです。受託し始めると、やっぱりこのお客さんに応えようっていうふうになります。しかも技術があればあるほど、そういう方向に走ります。すると、さらにそれに応えるために人が必用になります。受託というのは、人件費と売上が正比例します。その一方で技術開発は投資(開発費用)が先行します。しかし売上と利益が正比例になりますから、受託部門から人を引き揚げて開発部門に回すと、両方がダメになってしまうのです。

佐藤●その辺の社内的なマネジメントの面で、今回の「VoIP」の開発に取り組むのにはどのようにされてきたのですか。

村田●それはまず「VoIP」を本格的に取り組む時点で投資を受けましたから、現状の受託仕事はそのまま維持しました。受託部門で収支がバランスとれている状態にして、新規事業は投資家から預かった資金だけを振り向けるように強く言われました。

佐藤●内部補填とか流用は駄目ですよ、ということですね。

村田●そうです。むしろ投資家の方から「今までのお客様を大事に」といわれています。私は国内外の投資家に恵まれたと思うんですね。

技術志向の札幌

村田●受託の仕事は高利益水準には持っていきづらいのです。自社でユニークな技術を持っていて、それの特別仕様を提供できるようになると、所有している知的資産の上の開発で利益水準を上げることができます。

佐藤●技術の開発市場を探っていきますと、札幌のソフトウェアの会社は、相当に技術志向だなっていう感じがします。「しゃりばり」6月号(200号)で森影さんも指摘していますが、今のITバブルとかITブームとか言われている東京の渋谷のビットバレーなどは、ビジネスモデル特許に見られるように既存の技術を使うのが非常にうまい。しかもそれで商売を新たに産み出してくる。技術志向の札幌に対してビジネス志向の東京、という対比のされ方をすることも多いのですが、そのあたりについてはいかがですか。

村田●私も同様の受け止め方です。対照的にいえば、私たちはやりたい技術を実現するためにビジネスをするのに対し、東京の人たちはビジネスをやりたくて技術をやっているとなるかもしれません。だから札幌の人たちは必ずしも大成功しなくても仕事をがっちりやりたいというのが多い、これは長所であり短所でもあるかもしれません。

佐藤●今、この「VoIP」技術は、ソフトフロントさんが当然1番手ですけれども、ひたひたと2番手3番手が追いかけてきているその足音は聞こえるものですか。

村田●まだ大分離れていると思いますが、今、ライバルがいなくてもそこにマーケットがあるのが確実と分かれば、みんな一斉に追いかけてくると思います。だから追いつかれるということを前提にして行動すべきでしょう。もちろん性能向上といった技術を深めることもやりますが、更に重要なことはサービスの幅を広げ、アプリケーションまで踏み込んだサービスを提供したいと思っています。

佐藤●技術を開発するだけじゃなくて、その使い方の部分、アプリケーションの部分も一緒に考えてやっていくということですね。そこは逆にいうと札幌の今までのウィークポイントであった部分もカバーしようという狙いですか。

村田●札幌のソフト産業はサービスが弱いとも思わないのです。小さい会社で少ない人数でも技術を守りきって、ビジネスを成功させている会社が多いのも事実です。

佐藤●今、ソフトフロントさんと対等にリスクも負担し合うという意味でのパートナーといえる企業は札幌というか北海道にありますか。

村田●ええ、5、6社あります。

佐藤●今後そういう会社がもっと地場に増えてほしいという思いはおありですか。

村田●ええ、それはそうです。なるべく同じ方向で新技術をそれぞれが見つけてきてやるのが一番望ましい。その点、フィンランドの「ノキア」などは素晴らしい。携帯電話文化を支える大変な数の企業群があって、国を挙げていろいろなアイデアを実現しています。

佐藤●フィンランドは国策として取り組んでいますよね。そういうポテンシャルは、北海道や最近何かと話題の札幌駅北口周辺に新しい胎動のようなものを感じられていますか。

村田●技術的なポテンシャルは十分あると思います。後は取り組むべきテーマです。今、会社がどんどん独立分散していっているのですが、技術のベクトルを揃えていけば、技術の厚みが出て、こういうテーマだったらここの会社というように、そして札幌でということになればいい。ちょっと分散気味なのは、北海道の気質というのもあるのかなと思います。やっぱり独立して自分の会社を作ってやりたいというのが、大きい魅力なんでしょう。これはいいことですけれど。

ビジネスカフェの役目とITのこれから

佐藤●ビジネスカフェ(略称・ビズカフェ=BizCafe)の世話人、発起人という立場でかかわっていらっしゃるのも、そのような狙いがあってのことでしょうか。

BizCafe村田●ビズカフェは多くの方に札幌でのITビジネスに対する意識を向けてもらい、ビジネス協力を深める場になればと思っています。 私はやっぱり学生のときに、IT系の人たちと接触をする中で大学生にもチャンスがあることを体験しましたし、そのような環境が将来の地域の元気に繋がると思っているのです。今回のアメリカでの売り込みで経験した一つが、自分の直接のビジネスにつながらなくても周囲の会社に紹介してやろうという信頼のネットがあることでした。日米のベンチャー企業を育成しようとする姿勢に落差を感じました。
 私たちも、「クールビレッジ」といって、5社で仕事を回しあう一種の共存防衛体制をとっています。一人の社長が5人の社長を知っている状態と、10人の社長を知っている状態はネットワークの質が全く違ってきます。そういう輪を広げる核になるビズカフェになったらという期待があります。

佐藤●ビズカフェに行くと何かあるぞという場になるといいですよね。母校の北大を含めて、IT系の人材は続いてきていますか。

村田●技術系の人は、あまり見当たらない。文系で技術は持ってないけれども、こういうアイデアを生かしたいという人たちはいるようです。自由に新しいことに賭けてもいいという環境がないと、人材は出にくい。私の場合は、先生が最新の機器をそろえて最新の環境でやらせようっていう考え方が徹底していました。そういうものに触れながらやるというのはすごく重要だったと思います。ですからこれから参入する人たちに対して、ビズカフェのような旗を立てておくことや、新しい環境を提供してあげることが大切だと思います。

佐藤●ビズカフェには、ぜひ元気な学生に集まっていただき、熱気のある渦を巻き起こしてもらいたいものですね。

村田●コンピューターの世界を面白いと思うことと、これでなんか商売をしようということはぜんぜん違う。私が大学に入るころにCPUが量産されるようになって、それでガレージから会社ができてきたという話を聞いているうちに、周りを見ると新しい商品が生まれるのが見えてきたし、じゃあそのマーケットで何とかビジネス展開していけるのではと思って仕事を始めたのです。
 今もIT系そのもので大きな産業が生まれるという感じではなくて、むしろそれぞれの企業の体質が電子化されることによって変わるだろうし、そのための技術提供の仕事をしたいと思っています。

佐藤●現在のITブームというか、IT革命はまだしばらく続くとお思いですか。ソフトフロントさんが手がけている仕事の5年後10年後にどんなことが、待ち受けているとお思いでしょうか。

村田●まずITブームはロングブームでしょう。今後、ITバブルの渦中で3割減か5割減か分からないけれども、株価の調整は始まるでしょうが、IT関連は経済の主流になると思います。金融に限らず商売の取引の現場が、結局ネット化され、だれにとってもよりコストが安くて利便性が高いものとして社会に行き渡るのは間違いないでしょう。
 ボイスの特質は、書きこむ作業の何十倍も速いわけですから、ボイスをみんな自由に録音できる状況になれば、それを組み込んだ文化ができて今までとは違ったニュールールのビジネスが行われると思います。

世の中の転換を加速させたい

佐藤●以前、村田社長はネットワークイグジステンス(Network Existence)という言葉をよく使われていたと思います。実際に私たちは、こうして存在しているわけですが、その人間がネットワーク上にも存在することが重要だと言われていたように思います。そこへ「VoIP」が普及してくると、日常生活もビジネスもネットワークへの依存性が高まって社会そのものがネットワーク前提の世界になりそうです。なにか今までの社会システムまでもが逆転する感じもします。

村田●電話とネットの比率は間違いなく代わります。アメリカではすでにネットワークがあってその次に電話となってきています。これからは、いろいろな業界で昔ながらの論理と新しい論理との攻めぎあいが熾烈になってくる気がします。
 そこで、私たちは「先に進もう」、「恐れずに変えよう」というところとお付き合いするでしょう。世の中の転換の加速に貢献するのが私たちの責務かとも思います。

佐藤●村田さんご自身、昔からコミュニケーションというのを非常に重要視されて、作られているアプリケーションソフトもコミュニケーション志向の強い物になっていると思います。「VoIP」もおそらくその延長線上に位置付けられていると受け止めていますが、その姿勢は今後も会社の考え方としてずっと通していかれるお考えですか。

対談村田●そうです。そう思うようになった経緯はいろいろありますが、学生時代からITは人間に代わるものができるわけじゃなくて、人間の活動を支援する、人間の機能を補完するのだと考えてきました。
 大体ネットワークもコンピュータも最大の使命は人間の機能を拡張してあげるということと、それから人間同士のコミュニケーションを円滑にすることだと思うのです。どうせやる研究なら社会に貢献して一番効果的なことをやりたいわけですよね。会社はそのためにあると思っています。

佐藤●ソフトフロントの前身にあたるビジョン・コーポレーションの会社案内がすごく心を打つ表現だったことを覚えています。「全ての経営資源を一つの会社に取り込んでやっていくスタイルは、もう今の世の中には合わないので、ビジョンを共有化できるパートナーなり会社と一緒にやっていく」という内容だったと思います。今のソフトフロントさんもそのような考え方なのかどうか、どうですか?

村田●私は会社経営を意識してコンセプチュアル(概念)な部分から始めました。自分の会社はこういうふうになったらいいと表明して、それに基づいて人材を集め会社をやりたかったのです。
 でもこれには、なかなか微妙なところがあります。リアルタイムというのにちょっと遅れているだろうと自覚しています。けれども、やっぱりテクノロジーの将来像、サービスの将来像に関しての役割を押しつけがましくない程度に果たしていきたいと思っています。

佐藤●「VoIP」の技術をもって、企業として「これを一緒にやらないか」っていう感じでパートナーを集めていくことになりますか。現実に「VoIP」の技術を使いたいと言っているところは?

村田●あります。

佐藤●提携しようとする際の判断材料はどうなりますか。

村田●やっぱり共有しようとするプランが、本当に伸びるサービスかどうかということです。

佐藤●去年、札幌あるいは北海道でコールセンターの話が有望だということで誘致のための調査をしたのですが、その際に「VoIP」の話も出てきました。センターにこのシステムが備えられると一気に市場が立ちあがるように思っています。今後の会社の方向性はどのようなものになるのでしょうか。

村田●そうですね。まず技術者の増強が必要です。そして同時に販売スタッフを充実させたい。お金を投資家の方々から預かっていますから、期待に応える形でお返しをしたい。

佐藤●正直言って現在の100人規模の企業を率いることは、当初のような少数でやっていかれる路線とは違うと思いますが、これは予想外だったのではないですか。

村田●まあ、BUG時代も100人を越えていましたから、これまでは体験済みです。今秋の新作発表に向けたここからが未体験ゾーン。しかし、スタッフは自律していますから、それほど心配はしていません。

佐藤●札幌にこのような企業があることが、重要なんだろうと思いますし、「地方でもできるぞ」というのを目の当たりにする体験がほしいところです。

村田●私たちは合併からの日も浅いのでスタートアップ時に大きくなるという戦略です。BUGやハドソンのようなしっかりした技術をもって長いことやってきたところとは違う道を選ぶことになると思います。

佐藤●われわれのような一般ユーザーが「VoIP」をやれるのはそう遠い日ではないですか。

村田●ええ、アメリカから外報として「サッポロで開発されたVoIPが全米で発売された」と入ってくるのも楽しいじゃないですか。

佐藤●最後に札幌ってどうですか。IT系の仲間と話をすると、「札幌って何が強みなんだろうね」という問いが出て、最大公約数的な答は「関係者の顔が見えていて見えすぎてもいない、田舎なんだけど田舎臭くない、非常に環境がいい」というところに落ち着きます。村田社長ご自身はどういうところにこの札幌の良さを感じていらっしゃいますか。

村田●おっしゃる通りですね。右に同じ。それと皆を裏切れないという思いもある。お互いに儲けていないし(笑)。

佐藤●私たちが応援なんていうのは、口幅ったいのですけれど、少なくとも「しゃりばり」という媒体がありますからこの雑誌を通したいろいろな人とのネットワークなども生かして紹介させてもらいたいと思います。

村田●頑張りますので、ぜひこれからを見ていて下さい。

(編集部注:このインタビューは、ソフトフロントのHPでも読むことができます)

■村田利文(むらた としふみ)氏 1956年生まれ。北海道大学大学院修士課程修了。専攻は電子工学。1980年、大学在学中に札幌で同級生3名とBUGを設立し取締役に。92年に退職し、産学官協同のソフトウェア普及団体(IPC)の立ち上げ業務を担当し、現在も企画室長。同年、(株)ビジョン・コーポレーションを設立し代表となる。97年、合併に伴い新会社(株)ソフトフロントの代表になり現在に至る。

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